金の翼を持っていた Tico

resultCIMG1111.pngみなさん、よかったら、絵本の紹介のページへ遊びに来てください。というのは、このところ、順を追って、レオ・レオーニの作品を紹介しているからです。「あおくんときいろちゃん」にはじまって「スイミー」「フレデリック」。そして、今回の「Tico」で、レオーニを終わりにしようと思います。
実は、「Tico」は、まだ日本で翻訳されていないと思うので、是非この機会にご紹介します。
わたしが、三年前にウイーンに行ったとき、友人がこの絵本を本屋さんで見つけ、はじめてわたしもこの作品に触れました。resultCIMG1114.png
過去の作品でも、表現手法も切り絵や水彩など、多様でしたが、今回の色彩は、とてもシックです。色彩は、色を組み合わせれば、組み合わせるほど難しいのです。色が濁ってしまうからです。色彩豊かで鮮明に、あるいはスイミーに出てくるくらげのような透明感がでてくると素敵ですが、下手な人だと、色がごちゃまぜになって、全体が不調和かにごってしまいがち。でも、シックというのは、深い落ち着きを感じさせる色であり、鈍い色彩、良い具合ににごっている、という感覚だとわたしは思うのです。

さて、お話ですが、一羽だけ羽のない鳥が、羽を欲しがっています。名前は、Tico。すると、彼の願いは聞き届けられ、金の羽が生えてきます。ところが、仲間はこれを喜ばないのです。ここでも、Ticoは、みんなと違って何故いけないの?と嘆きます。Ticoは、病気のこどもの薬を買えないで困っているお父さんに出会い、すっかり同情して、自分の金の羽を抜き取ってあげます。すると、抜き取った部分から不思議と黒の羽が生えてきました。
resultCIMG1116.png貧しいやもめにも、金の羽を抜いてあげました。Ticoは、金の羽という富を自分の満足だけでおわらせず、泣いている人たちと分かち合うことに用いたのです。やがて、Ticoの羽は黒く代わっていきます。すっかり普通の平凡な姿になったTicoを見て、仲間の鳥たちは、やっとTicoを自分たちのグループに受け入れ、Ticoも幸せになるのです。でも、作品の最後には、こうつけ加えられています。「みんなが違っていていいし、みんながそれぞれ見えない金の羽を持ち、それぞれの物語をもっています。」と。


resultCIMG1119.pngレオ・レオーニは、「自分って誰?」というテーマで一貫して作品を生み出してきました。それは、彼がいつも自分自身を、人
とどこか違っている、と感じて生きてきたからでしょう。第二次世界大戦のときは、ユダヤ系であった彼は、イタリアでファシズムと戦い、アメリカに亡命しました。虐殺を逃れた小魚スイミーの姿は、同胞を失って、暗い海底をさまよった作家自身の姿ともいえます。ところが、スイミーでの最後の場面は、政治的英雄になった、とかリーダーになった、とか残念ながら間違えられがちです。そうでなく、スイミーの孤独と深い思索の中から蓄積されたのは、真実を見抜く先駆者としての目、知恵者としての力です。それが、「スイミー」で込められているのです。そして、この「Tico」では、誤解なく、黒い羽の普通の鳥になった主人公を、リーダーとして描くのでもなく、内に秘めた知恵者として静かに表現しています。わたしは、Ticoに出会って、さらにスイミーのことがわかってきたような気がします。
見えない金の羽を持った人や、豊かな物語を仕舞っている人は、私たちのまわりにいるでしょう。単調な生活の中ですが、それぞれが、素敵なTico達に出会えって、勇気をもらえたらと願います。









 
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